経営の判断に迷ったとき、私はこの一冊に立ち返ります。稲盛和夫さんの『生き方』。京セラとKDDIを育て、JALを再建した経営者が「人としてどう生きるか」を正面から語った本です。今回は、この本を経営者として読み返し、自社の現場で一つだけ実践してみたレビューをお話しします。読んで感心して終わり、ではなく、明日の判断を変えるために使ってみた記録です。
どんな本か|技術書ではなく「土台」の本
『生き方』は、経営テクニックの本ではありません。利他の心、誠実さ、努力を続けること——一見あたりまえに聞こえる原理原則を、実体験とともに語った本です。あたりまえだからこそ、忙しい経営の現場では真っ先に忘れます。私はこの本を、戦略やノウハウの前提にある「土台」を点検するために読み返しています。
自社でやってみたこと|判断の前に「動機」を問う
本のなかで何度も出てくるのが「動機善なりや、私心なかりしか」という問いです。私はこれを、大きな意思決定の前に一度だけ自分に問う習慣にしてみました。新しい取引、値決め、採用——判断の直前に「これは誰のための判断か」「自分の都合が混じっていないか」を確かめる。たったこれだけですが、目先の利益に引っ張られた判断が一つ、二つと減りました。
刺さった概念|「考え方」がすべてを左右する
能力や熱意があっても、考え方がマイナスに向いていれば、結果もマイナスに大きく振れる。この掛け算の発想は、人を見るときにも自分を律するときにも効きました。スキルの高さより先に、どんな姿勢で仕事に向き合っているか。採用や評価で迷ったとき、この観点が判断の軸になりました。
使ってみた率直な感想
正直に言えば、書かれていることは新しい知識ではありません。けれど、経営で消耗しているときほど、この「あたりまえ」が沁みます。ノウハウは状況で古びますが、土台の考え方は古びない。だからこそ、定期的に読み返す価値がある一冊だと感じました。効果の感じ方には個人差がありますが、私にとっては判断の質を整える「メンテナンス」のような本です。
こんな経営者・リーダーにおすすめ
数字や戦略は回っているのに、どこか判断に芯が通らない——そんな時期の経営者に向いています。逆に、即効性のあるテクニックを探している段階なら、別の本のほうが合うかもしれません。土台を整えたいときの一冊として手元に置く本です。
まとめ
『生き方』は、経営の土台を点検する本です。私は「動機善なりや、私心なかりしか」を判断の前に問う、という一点だけを持ち帰りました。一冊を読み切ることより、たった一つの問いを習慣に変えること。それが、本を「使う」ということだと思います。
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