開業でつまずく人を見ていると、「何をやるか」が分からないのではなく、「どの順でやるか」が分からないことのほうが多い気がします。届出、口座、決済、レジ、会計、保険。項目を並べること自体は検索すれば十分できます。それでも手が止まるのは、順番を間違えると後戻りが発生する項目が混ざっているからです。
この記事は、これから開業する方と開業一年目の事業主に向けて、五つの工程を「後戻りが起きない順」に並べ直し、そのうえで無料の開業相談と会計の仕組みを組み合わせて片づけるやり方を書きます。制度の細かい要件は変わりますので、最終的な判断は所轄の税務署や専門家にご確認ください。
順番を間違えると、後戻りする項目はどれか
後戻りの原因になりやすいのは、①事業の形(個人か法人か)②屋号 ③口座と決済 ④会計の始め方の四つです。逆に、あとから足しても痛くないものもあります。まず全体を並べます。
| 順 | 工程 | 後戻りの重さ | 目安の時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事業の形を決める(個人/法人) | 重い | 開業前 |
| 2 | 屋号を決める | 中 | 開業前 |
| 3 | 税務署への届出 | 中(期限あり) | 開業直後 |
| 4 | 屋号の口座・決済手段 | 中 | 開業直後 |
| 5 | レジ・会計(記帳の入口) | 軽いが早いほど得 | 開業前から |
ここで見落とされやすいのが5番が「開業前から」になっていることです。会計は開業日から始まるものだと思われがちですが、実際には開業前に払った支出も帳簿に載せられる場合があります。あとからまとめて拾おうとすると、領収書の山と記憶の勝負になります。
届出には期限がある——ここだけは日付で押さえる
個人で始める場合、開業届は原則として開業から一か月以内に所轄の税務署へ出します。あわせて検討したいのが青色申告の承認申請で、こちらは原則として開業日から二か月以内という期限が設けられています。
この二つは「出し忘れても罰金が来る」種類のものではありません。ただし期限を過ぎるとその年の扱いが変わることがあるため、開業日を決めた時点で先に日付を控えておくのがいちばん安全です。要件や様式は改正されますので、提出前に国税庁の案内や税務署で最新をご確認ください。
無料の開業相談を一回だけはさむと、順番が固まる
ここまでを一人で組み立てることもできますが、相談を一回はさむと「自分の場合はどれが要らないか」が最短で分かります。開業まわりの相談は無料で受けられる窓口がいくつもあり、費用をかけずに順番の確認だけを済ませることができます。
開業前の相談は公式から無料でできます。
Airビジネスツール開業相談
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相談で聞くと効く三つの質問
ただ「開業したいです」と伝えるより、質問を用意していったほうが持ち帰れる量が変わります。わたしが人に勧めているのは次の三つです。
①わたしの規模だと、個人と法人はどこで分かれますか。売上の見込みと、取引先が法人かどうかで答えが変わります。②最初の一年で、要らない手続きはどれですか。要るものより要らないものを教えてもらうほうが早いです。③開業前の支出は、どこまで持ち込めますか。これは会計の設計に直結します。
相談窓口は「決めさせる場」ではなく「順番を整える場」として使うと、こちらの手が止まりません。決めるのは持ち帰ってからで十分です。
会計は相談とセットで組む——これが併用の肝
相談で順番が固まったら、その足で記帳の入口だけ先に作ってしまうのがおすすめです。理由は単純で、入口が無い状態で日々の支払いが始まると、そこから先はすべて後追いになるからです。
具体的には、屋号の口座と決済手段を会計側につないでおくだけで、開業初年度の入力量がはっきり減ります。レジと会計の接続については会社員のうちに店のレジと会計を決めておく話に、レジそのものの総額比較はAirレジ・スマレジ・ユビレジの3年総額の比較にまとめてあります。
会計ソフトを既に使っていて乗り換えを迷っている場合は会計ソフトの乗り換えは、いつ動くかが近い話です。開業後に現金の見通しを立てる段階まで来たら資金繰り表をエクセルで作らない方法へ進んでください。
わたしが順番を間違えた話
正直に書くと、わたしは屋号の口座を後回しにしました。最初の数か月を個人の口座で回してしまい、あとから事業とそれ以外を仕分け直すのに丸一日かかりました。金額の大小ではなく、件数が効くのだと身にしみた出来事です。
もうひとつは、開業前に買った備品の領収書を「どうせ少額だから」と捨てかけたことです。相談で「そこは持ち込める可能性がある」と言われて慌てて拾い直しました。判断がつかないものは、捨てずに一箱にまとめておく。それだけで後の選択肢が残ります。
開業初年度に、やらなくていいこと
反対に、急がなくていいものもあります。凝った名刺、立派なホームページ、大きな在庫。どれも売上が立ってからでも間に合うものです。開業直後にいちばん減るのは現金ではなく時間なので、期限があるものと、後戻りが重いものだけを先に片づける。この線引きが結局いちばん効きました。
今日の一手
開業日を仮でよいので決めて、そこから一か月後と二か月後を手帳に書き込む。次に、無料の相談を一枠だけ押さえて上の三つの質問を持っていく。最後に、屋号の口座と会計の入口をつなぐ。この三手だけで、開業まわりの迷いはかなり減ります。制度や条件は変わりますので、実際の手続きの前に必ず最新の情報をご確認ください。
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