「うちの強みは何ですか」と聞かれて、価格やスペック、実績を並べて答えていないでしょうか。今回は経営者一人称の実験枠として、楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略』を、自社の戦略を語り直す道具として使ってみた記録です。この本の主張はシンプルで、優れた戦略は個々の強みの寄せ集めではなく、それらが因果でつながった「思わず人に話したくなる物語」になっている、というもの。自社の戦略を物語として語れるか、実際に試してみました。
『ストーリーとしての競争戦略』が言っていること
この本の中心にあるのは、「戦略は静止画ではなく動画である」という視点です。多くの会社は、自社の強みを箇条書きのリスト——安い、速い、品質が高い——として語ります。しかし楠木さんは、本当に効く戦略は、それぞれの打ち手が「なぜそれが次の打ち手を可能にするのか」という因果でつながり、一本の流れになっていると指摘します。個々の施策が優れているかどうかより、それらが物語としてつながっているかが競争優位を生む。読んでいて、自社の説明がいつも「リスト」で止まっていたことに気づかされました。
やってみたこと1|自社の強みを「箇条書き」で出し切る
最初に、いつもの調子で自社の強みをリストにして書き出してみました。対応が速い、担当が変わらない、小回りが利く、既存客からの紹介が多い——出てくるのはやはり単発の長所ばかりです。本の言葉を借りれば、これは「静止画の寄せ集め」の状態。ここで手が止まったのが逆に収穫でした。強みは言えるのに、それらが互いにどうつながっているのかを、自分でもうまく説明できなかったのです。戦略を語っているつもりで、実は特徴を列挙していただけだったと痛感しました。
やってみたこと2|強みを「だから」でつないでみる
次に、並べた強みを「だから」でつなぐ作業をしました。担当を変えない、だから客の事情が蓄積する、だから提案が的確になる、だから紹介が生まれる、だから新規獲得コストが下がり、その分また担当を手厚くできる——こうつなぐと、バラバラだった長所が円環する一本の流れに見えてきます。ひとつの選択が次を呼び、それがまた最初の選択を強くする。この「つながり」こそが、他社がひとつの施策だけ真似しても再現できない部分だと腹落ちしました。リストが物語に変わった瞬間です。
やってみたこと3|「一見非合理」な一手を探す
本の中で特に響いたのが、優れた戦略には「部分だけ見ると非合理に見える一手」が含まれている、という指摘です。全体の物語の中に置くと合理的なのに、単体で見ると損に見える。だから競合は「なぜあんな遠回りを」と敬遠し、真似されにくい。この視点で自社を見直すと、「手間はかかるが続けている習慣」がいくつか浮かびました。今まで非効率だと削ろうとしていたものが、実は物語の要になっていた可能性がある。何を残し何を捨てるかの判断基準が、一段深くなりました。
使ってみた所感|戦略は「語れるか」で試せる
実際に自社でこの本を使ってみて一番の収穫は、「自社の戦略を人に物語として語れるか」が、そのまま戦略の強さのテストになる、と分かったことです。つながりが弱ければ物語は途中で切れ、聞き手はピンと来ません。逆に、一手が次の一手を呼ぶ筋が通っていれば、話は自然と前のめりになる。経営者一人称の反省として、これまで自分は特徴を売り込んでいて、物語を語っていなかった。この本は難しい分析手法ではなく、「自社の話を語り直す」という誰でも今日試せる形で、戦略を考え直させてくれる一冊でした。
まとめ|強みのリストを、一本の物語に変える
『ストーリーとしての競争戦略』は、強みを増やすより、強みをつなぐことに目を向けさせてくれる本です。自社の長所を箇条書きにし、「だから」でつなぎ、一見非合理な一手を探す。この順で自社を見直すと、バラバラだった施策が、他社に真似されにくい一本の物語に見えてきます。次の経営会議で、自社の戦略を物語として語ってみる——その準備運動として、手に取ってみてはいかがでしょうか。
🏆 まとめ記事:経営者が「組織・戦略・仕組み化」を一段引き上げるビジネス書5選 でも本作を紹介しています。


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