生成AIというと「文章や資料を自動で作ってくれる道具」という印象が強いかもしれません。でも私が経営の現場でいちばん助けられているのは、作る場面ではなく「考える場面」でした。今回は、生成AIを答えをもらう相手ではなく、思考を整理する壁打ち相手として使ってみた話をお伝えします。数字で効果を約束するものではなく、あくまで私自身の使い方の記録としてお読みください。
これは何の話か
壁打ちとは、もともとテニスで壁にボールを打ち返してもらう練習のこと。経営の文脈では、誰かに自分の考えをぶつけて反応をもらい、思考を整理することを指します。本来は信頼できる相棒や顧問の役割ですが、相手の時間を選びますし、いつでも頼めるわけではありません。生成AIは、その壁打ちをいつでも始められる相手になりました。
使ってみて、どうだったか
私がよくやるのは、頭の中でもやもやしている課題を、まず話し言葉のままAIに書き出すことです。きれいにまとめる必要はありません。「いま集客が伸び悩んでいて、原因が集客なのか成約なのか切り分けられていない」といった具合に、ぐちゃぐちゃのまま投げます。
すると、AIは「どの数字を見れば切り分けられそうか」「前提として何を確認すべきか」を質問で返してくれます。この質問が効きます。答えそのものより、自分が見落としていた問いに気づかせてくれるからです。人に相談する前の「考えを整える段階」を、ひとりで何往復もできるのが大きな利点でした。
もうひとつ役立つのが、反対意見をあえてお願いする使い方です。「この施策に賛成の立場ではなく、反対の立場で問題点を挙げて」と頼むと、自分の思い込みを外から点検できます。経営者はどうしても自分の決めたことを正当化しがちなので、安全に反論をもらえる相手がいるのは心強いものでした。
AIに任せること、人が握り続けること
ここで大事にしているのは、線引きです。AIに任せるのは「考えを言葉にする手伝い」「論点の洗い出し」「別の視点の提示」まで。最終的に何を選ぶか、誰と組むか、どこにお金と時間を賭けるかという判断は、人が握り続けます。
| 場面 | AIに任せると楽なこと | 人が集中すべきこと |
|---|---|---|
| 課題整理 | もやもやの言語化、論点の列挙 | どの論点が本当に重要かの見極め |
| 意思決定 | 選択肢の整理、反対意見の提示 | 価値観に照らした最終判断 |
| 対人 | 伝え方の下書き、想定問答 | 信頼関係づくり、対面での対話 |
AIが考えを整える作業を肩代わりしてくれるほど、人は「何を大切にして決めるか」という、いちばん人間らしい仕事に時間を使えるようになります。AIに仕事を奪われるという話ではなく、奪われたくない仕事がどれかが、かえってはっきりしてくる。これが使ってみての実感でした。
どんな経営者・場面に効くか
こんな場面で役に立ちます
- 相談できる相手がそばにおらず、考えを整理する場がほしい
- 自分の判断が思い込みになっていないか点検したい
- 会議や面談の前に、論点と想定問答を一度さらっておきたい
- 新しい施策の賛成・反対を両面から見てから決めたい
注意点・向かない人
ここは気をつけたいところ
- AIの返答が常に正しいとは限りません。事実関係は必ず自分で裏取りをします
- 顧客名や社外秘の数字など、外に出せない情報はそのまま入力しない運用にしています
- 最終判断までAIに委ねると、当事者意識が薄れます。決めるのは人、という線は崩さないほうがよいです
試すなら
難しい準備は要りません。今日のいちばん気がかりな課題を、話し言葉のままAIに書き出して、「論点を整理して」「反対の立場で問題点を挙げて」と頼んでみてください。答えをもらう道具としてではなく、考えを整える相手として一度使うと、印象が変わるはずです。AIとの付き合い方を体系的に知りたい方は、関連の書籍を一冊手元に置いておくと、活用の幅が広がります。
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生成AIは、答えを出してくれる道具としてだけでなく、考えを整える壁打ち相手としても力を発揮します。もやもやを言葉にし、論点を洗い出し、反対意見をもらう。その先で「何を大切にして決めるか」を握り続けるのは人の仕事です。AIに任せられる作業が増えるほど、人がやるべき判断はくっきりしてきます。まずは今日の課題を一つ、AIに話しかけてみてください。
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