価格改定の進め方|値上げを取引先に納得してもらう3つの根拠と、通知のタイミング【経営者向け】

値上げを切り出す前にそろえる3つの根拠|経営者向け 起業・開業

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値上げの話を切り出せないまま、もう一年が過ぎている——。経営者どうしで話すと、これがいちばん多い本音です。私も同じでした。原価は上がっているのに、長い取引先ほど言い出しにくい。ただ、実際にやってみて分かったのは、価格改定が通るかどうかは「切り出し方の上手さ」でほとんど決まらないということです。決まっていたのは、その前にどれだけ数字をそろえていたか、でした。

結論:交渉の巧拙でなく、事前にそろえた3つの根拠で決まる

私が実際に価格改定を進めたとき、通った相手と揉めた相手のちがいははっきりしていました。通った相手には、聞かれる前に数字が出せた。それだけです。用意すべきは次の3つです。

  • ①原価の内訳:何がいくら上がったのかを品目単位で言えるか
  • ②取引先ごとの粗利:その相手だけが薄い、と数字で示せるか
  • ③据え置いていた期間:何年何か月、価格を動かしていないか

逆に言えば、この3つが出せない状態で切り出すと、相手は「便乗値上げでは」と受け取ります。相手が疑っているのは値上げそのものでなく、根拠のなさです。

なぜ切り出せないのか──理由はたいてい「怖い」ではない

切り出せない本当の理由は、度胸の問題ではありませんでした。自社の数字を自分で把握していないから、詰められたときに答えられない——それが怖いのです。つまり問題は交渉の場でなく、その手前の経理と管理会計にあります。

ここを押さえると、話は驚くほど単純になります。数字が出るようにしておけば、切り出すこと自体はただの事務連絡になります。

根拠①:原価の内訳を、品目単位で言えるようにする

「全体的に上がっています」は通らない

「原材料が全体的に上がりまして」という説明は、ほぼ確実に押し返されます。相手の担当者も社内を通さなければならないからです。相手が社内で使える紙をこちらが用意する——この発想に変えると、話が進みます。

やること

仕入や外注の勘定を品目・取引先別に分解し、いつ・何が・何%上がったかを一覧にします。クラウド会計に取引が入っていれば、この分解は集計の設定だけで出せます。エクセルに手で写す作業は、ここでは不要です。

根拠②:取引先ごとの粗利を出す

全社の粗利率だけを見ていると、どの相手で損をしているかが永久に分かりません。私の会社では、取引先別に集計した瞬間に「いちばん長い付き合いの相手がいちばん薄い」という、ありがちで痛い事実が出てきました。

この数字があると、交渉の目的が変わります。「全部を上げてください」ではなく「この品目だけを戻させてください」と言えるようになる。相手にとっても飲みやすい話になります。取引先別の集計は試算表を待たずに数字を見る仕組みを作っておくと、月次を締める前に見えます。

根拠③:据え置いた期間を数える

これは意外と効きます。「前回の改定は◯年◯月です」と即答できると、話の空気が変わります。相手も「そんなに動かしていなかったのか」と気づくからです。逆にこちらが即答できないと、それだけで交渉の主導権を失います。

請求データが残っていれば、単価の推移はすぐ引けます。請求・入金管理を仕組み化しておくと、この照会が数分で終わります。

通知のタイミングと、文面で外してはいけない一点

タイミングは、相手の予算編成より前が原則です。期初に決まってしまった予算に後から割り込むのは、金額の問題でなく段取りの問題で嫌がられます。少なくとも改定の2〜3か月前には一報を入れます。

文面で外してはいけないのは、謝りすぎないことです。詫び状の体裁にすると「無理を言っている」と自分で認めた形になり、値引き交渉の入口になります。書くべきは、①改定の対象と率 ②適用の開始時期 ③そう判断した根拠 ④これまでの取引への感謝、の順です。感謝は最後に短くで十分です。

自社の実録:私の会社では、取引先別の粗利を出したうえで、薄い順に3社へ改定を打診しました。結果は2社は即了承、1社は品目を絞って部分改定。揉めると身構えていたのに、いちばん時間がかかったのは交渉でなく数字を出せる状態にするまでの準備でした。逆に言えば、準備さえ終わっていれば、切り出しは一通のメールで済みます。

数字をそろえる道具は、もう安くなっている

ここまでの3つの根拠は、どれも「日々の取引がデータで入っていること」が前提です。紙とエクセルのままだと、根拠づくりに数週間かかり、その間にまた原価が動きます。クラウド会計に入れておけば、原価の内訳も取引先別の粗利も、集計軸を変えるだけで出ます。

どれを選ぶかは規模と業種で変わります。比較はfreee・マネーフォワード・弥生の選び方にまとめました。まずは無料期間で、自社の取引をひと月ぶん入れてみるのが早いです。

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まとめ

価格改定は、交渉術ではなく準備の勝負です。①原価の内訳 ②取引先別の粗利 ③据え置き期間——この3つが手元にあるだけで、切り出す難易度は劇的に下がります。値上げを言い出せない状態が続いているなら、まず社内の数字を出せるようにする。順番はいつも、数字が先で、交渉があとです。

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